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福岡地方裁判所小倉支部 昭和43年(ワ)1107号 判決

原告 光司憲雄

〈ほか二名〉

右四名訴訟代理人弁護士 尾山正義

被告 プラザーミシン販売株式会社

右代表者代表取締役 安井正義

右訴訟代理人弁護士 古川公威

同 水崎嘉人

主文

一、被告は

原告光司憲雄に対し金八一九、四八四円、

原告古賀和子に対し金六一九、八八〇円

原告光司アヤコに対し金七一四、八一八円、

原告光司宏平に対し金二八九、八八〇円、

及び右各金員に対する昭和四三年一二月二二日から各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告その余の請求を棄却する。

三、訴訟費用はこれを二分し、その一を原告らの、その余を被告の負担とする。

四、この判決は、第一項に限り、原告光司宏平において金五〇、〇〇〇円、その余の原告らにおいて各金一五〇、〇〇〇円の担保を供するときは、仮に執行することができる。

事実

第一、当事者の求める裁判

一、原告ら

(一)  被告は、原告光司憲雄に対し金一、七六〇、八二六円、原告古賀和子に対し金一、四一一、三二〇円、原告光司アヤコに対し金一、二四六、九八〇円、原告光司宏平に対し金六五一、三二〇円、及び右各金員に対する訴状送達の翌日から各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決、並びに仮執行の宣言を求める。

二、被告

(一)  原告らの請求を棄却する。

(二)  訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決並びに被告敗訴の場合担保を条件とする仮執行免脱の宣言を求める。

第二、請求原因

一、(事故の発生)

昭和四二年四月六日、訴外金木元の運転する普通貨物自動車(以下本件自動車という)が、訴外光司亀一、原告光司憲雄、同古賀和子等約一八名を乗車させて、北九州市八幡区香月町中谷三五九七番地附近の左方に曲がる道路上を直方市方面から八幡区黒崎方面に向かって進行中、安定を失って道路中央に横転し、そのため訴外光司亀一は頭部挫傷、脳挫傷等を受けて同月八日死亡し、原告憲雄は一六日間の入院、一〇日間の通院を要する左肩、両手両下腿挫創の傷害、原告和子は一二日間の入院を通する顔面挫傷、頭部挫傷の傷害を受けた。

二、(被告の責任原因)

(一)  被告は本件自動車を所有し、これを自己のために運行の用に供する者であった。

(二)  訴外金木元は被告の被傭者で事故当時被告の業務のために本件自動車を運転していた者であり、かつ本件事故は左のように訴外金木の過失によるものである。すなわち訴外金木は事故現場附近の左方に曲がる見とおしのきかない道路上にさしかかった際、自動車運転手として中央線を超えないように適宜減速すべき業務上の注意義務があるにもかかわらず、これを怠り、漫然と時速約五〇キロメートルの高速で進行した過失により、ハンドル操作が不適格となって本件自動車を中央線を超えて進路右側に進出させ、至近距離において反対方向から進行して来た大型貨物自動車に気付き、あわててハンドルを左右に切り自車の安定を失わせたため、本件事故を惹起させたのである。

三、(損害)

(一)  訴外亀一の損害(逸失利益)と原告らの相続

1 訴外亀一は事故当時五四才で昭和四二年三月末以来被告会社黒崎営業所に集金係として勤務し、日給として少くとも金一、〇〇〇円を取得していた者であるが、本件事故に会わなければ今後一一年間は就労可能であった。そして同人の一ヶ月の稼働日数を二六日とし、夏季、年末手当を金五二、〇〇〇円得られるとすれば、一ヶ年の総収入は金三六四、〇〇〇円となり、これから一ヶ年の生活費金一二四、四二八円、社会保険料金六、六七七円、県町民税二、九〇七円を控除すると、一ヶ年の純利益は金二二九、九八八円となる。訴外亀一は右利益を一一年間にわたって取得しうべきものを、本件事故によりこれを失ったので、同人の逸失利益の事故時の現価額をホフマン式計算法(複式)により求めると、金一、九七五、六一九円となる。

2 原告光司憲雄は訴外亀一の長男、原告古賀和子は長女、原告光司アヤコは妻、原告光司宏平は養子である。

3 したがって原告らは、訴外亀一の有する前記損害賠償請求権から同人の死亡により得られた自賠責保険給付金一、四七四、六七八円を控除した金五〇〇、九一四円を法定相続分に応じて承継取得するが、これを計算すると原告アヤコは金一六六、九八〇円、その余の原告は各金一一一、三二〇円となる。

(二)  原告憲雄の損害

1 訴外亀一死亡による慰謝料 金七〇〇、〇〇〇円

2 自己の受傷による慰謝料 金七〇〇、〇〇〇円

3 自己の治療費 金六三、三四〇円

4 原告憲雄が支出した原告和子の治療費 金三六、一六六円

5 弁護士費用 金一五〇、〇〇〇円

(三)  原告和子の損害

1 訴外亀一死亡による慰謝料 金七〇〇、〇〇〇円

2 自己の受傷による慰謝料金 五〇〇、〇〇〇円

3 弁護士費用 一〇〇、〇〇〇円

(四)  原告アヤコの損害

1 訴外亀一死亡による慰謝料 金一、〇〇〇、〇〇〇円

2 弁護士費用 金八〇、〇〇〇円

(五)  原告宏平の損害

1 訴外亀一死亡による慰謝料 金五〇〇、〇〇〇円

2 弁護士費用 金四〇、〇〇〇円

四、(結論)

よって被告に対し、一次的に自動車損害賠償保障法三条、予備的に民法七一五条に基づき原告憲雄は前記三(一)3及び(二)の合計金一、七六〇、八二六円、原告和子は同三(一)3及び(三)の合計金一、四一一、三二〇円、原告アヤコは同三(一)3及び(四)の合計金一、二四六、九八〇円、原告宏平は同三(一)3及び(五)の合計金六五一、三二〇円並びに右金員に対する本件事故発生後である訴状送達の翌日から各支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三、請求原因に対する被告の答弁

一、請求原因第一項のうち原告主張の日時に原告主張内容の交通事故が発生し、訴外亀一が死亡し、原告憲雄、同和子が負傷したことは認めるが、その余は争う。

二、同第二項のうち被告が本件自動車の所有者であることは認めるが、その余は争う。

三、同第三項のうち訴外亀一が昭和四二年三月末以来被告会社黒崎営業所に集金係として勤務していたことは認めるが、同人と原告らとの身分関係は不知、その余は争う。

第四、被告の抗弁

一、(自賠法三条但書)

本件事故は被告黒崎営業所の従業員慰安旅行の帰路起ったものであるが、被告黒崎営業所では酩酊運転等による事故の発生を防止するため定期路線バスが利用できる畑観音を行先に選び、旅行前日及び当日、営業所長が訴外亀一、原告憲雄、同和子を含む全従業員に対し、バス代は被告が負担するから全員往復定期バスを利用すべきことを厳命しておいたにもかかわらず、訴外亀一、原告憲雄、同和子を含む一〇数名の従業員は飲酒しかなり酩酊した訴外金木元を酩酊しているのを承知でけしかけ、利用を差止められている本件自動車を運転させたため本件事故を惹起させたのである。すなわち本件事故はもっぱら訴外亀一、原告憲雄、同和子らの過失に起因するもので被告及び運転者金木は無過失というべく、また本件自動車には構造上の欠陥及び機能の障害がなかった。

二、(同乗不承諾による免責の主張)

前記のように運転者訴外金木は乗車当時かなり酩酊していて同乗に対する諾否の能力を失っていたとみるべきだから、運転者が同乗について明示的にも黙示的にも承諾を与えなかった場合と同様被告は同乗者たる訴外亀一及び原告らに対し保有者としても使用者としても責任を負わないと解すべきである。

三、(免責の特約の主張)

訴外亀一及び原告らは、酩酊していることが明らかな訴外金木の運転を認容した者として、運転者が自己のためだけを考えて運転することを甘受し、自動車運行について運転者と一体となってこれに伴う危険を冒すものというべきだから、同乗に際し被告との間に自賠法三条に基づく責任を問わない旨が合意されていたと解すべきである。

四、(安全輸送義務を負担していないことによる免責の主張)

仮に右合意が認められないとしても、かかる場合運転者としては少くとも同乗者に対し安全に輸送すべき義務は免除せられるべきである。

三、(過失相殺)

仮に被告の責任が認められるとしても、前記のように、訴外金木の運転を阻止すべきにもかかわらずこれに同乗した訴外亀一、原告憲雄、同和子の過失は重大なものであるから、損害賠償額を算定するにあたりこれを斟酌すべきである。

≪以下事実省略≫

理由

一、(事故の発生)

原告主張の日時にその主張の場所で、原告主張内容の交通事故が発生し、訴外亀一が死亡し、原告憲雄、同和子が負傷したことは当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫によれば、原告憲雄、同和子の負傷程度は原告主張どおりであることが認められる。

二、(被告の責任原因)

(一)  被告が本件自動車の所有者であることは当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫によれば、本件自動車は被告小倉営業所の営業用自動車で、事故時の運転者たる訴外金木は被告黒崎営業所に運転手として勤務していた者であること、事故当日被告黒崎営業所では営業所が計画した畑観音への従業員慰安旅行が行われ、その旅行には当初本件自動車は使用しない予定だったが、訴外金木がめじろをもって行くため営業所長の許諾を得て本件自動車の保管を委ねられ畑観音まで運転して行ったこと、したがって帰路も訴外金木が営業所まで運転して返還することが予定され、事実宴会終了後訴外金木は営業所まで帰ろうとして営業所従業員たる訴外亀一、原告憲雄、同和子らを便乗させて運転中本件事故を起したこと、したがって被告としても原告らが本件自動車に便乗して帰ることを予想できないことでもなかったことが認められ右事実によると本件事故時においても本件自動車は被告の運行支配下にあったものと解するのが相当であるから、特段の事情のない限り、被告は運行供用者としての責任を免れないものというべきである。

(二)  被告は自賠法三条但書の主張をするが、その要件たる運転手金木の無過失につき具体的な主張をしないばかりでなく≪証拠省略≫によれば、訴外金木は事故前日飲酒し二日酔いの状態であったのに当日畑観音で清酒を二合程飲みかなり酩酊した上、原告主張のように約一八名の同僚従業員を本件自動車に乗車させ見とおしのきかない曲線道路を高速で曲がろうとしたことが本件事故の直接の原因であることは明らかであり、訴外金木の無過失は認められないから、その余の点につき判断するまでもなく、被告の右主張は採用しえない。

(三)  次に被告は同乗不承諾による免責の主張をする。たしかに運転者が同乗について明示的にも黙示的にも承諾を与えたとはいえない場合には、同乗者は自賠法三条本文にいう「他人」に該当しないとか、自賠法三条の責任を負わない旨が合意されていたとかの理論の適用により運行供用者が免責されると解する余地はありうるが、≪証拠省略≫によれば、訴外金木は帰路勝手に乗り込んで来た訴外亀一、原告憲雄、同和子らの同乗を結局は拒むことなくそのまま出発したこと、訴外金木が当時かなり酩酊していたとしても同乗に対する諾否の能力を失うほど酩酊していた事情はうかがわれないことが認められるので、運転者の同乗不承諾の事実は認定しえず、且つ前記認定のように被告としても原告らの便乗行為を全く予想できない事態だったとも認められないので、いずれにしても被告の主張は採用の限りでない。

(三)  次に免責の特約の主張につき判断するに、≪証拠省略≫によれば、訴外亀一、原告憲雄、同和子らは運転者金木が畑観音で他の従業員と共に飲酒し酔っていることを知りながら、本件自動車の助手席と荷台に定員をはるかに超えて乗車したことは認められるが、右の事実から直ちに原告らが同乗中に生じた事故による損害賠償請求権を放棄する特約、あるいは運転者、運行供用者の責任を免除する特約がなされたと推定するのは困難であり、その他免責の特約を認めるに足りる証拠はない。

(四)  さらに被告は、前記状況の下において訴外金木は運転者として原告ら同乗者を安全に輸送すべき義務は免除せられるべきであると主張するが、前記のように訴外金木は原告らに対し、積極的に同乗を促したものでないとはいえ、結局は原告らの同乗行為を容認したのであるから、運転者として同乗者を安全に輸送すべき義務に変りはないものと解すべく、この点の被告の主張も採用しえない。

(六)  以上被告の免責の主張はいずれも採りえないので、被告は本件自動車の運行供用者としての責任を免れない。

三、(過失相殺)

前記のように、訴外亀一、原告憲雄、同和子は帰路の出発時において運転者金木が酩酊しているのを知っていたのであるから、同人の運転が大きな危険を伴うことを認識して極力その運転を断念させるような手段を講じ、飲酒のため発生する交通事故を未然に防止すべき注意義務があったにもかかわらず、同僚従業員と共に定員を超過して我勝に本件自動車に乗車して出発せしめ、それが本件事故に影響を与えたものであることは明らかであり、その不注意につき損害賠償額のおおよそ二割を過失相殺するのが相当である。

四、(本件事故による損害)

(一)  訴外亀一の損害(逸失利益)と原告らの相続

1  訴外亀一が事故当時被告会社黒崎営業所に集金係としていたことは当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫によれば、同人は当時五四才三ヶ月の健康な男性であったこと、入社して間もない被告会社集金係員の平均賃金が月額金三五、〇〇〇円位であり、夏と冬にそれぞれ基本給と同額程度の期末手当が受けられることが認められるので、政府の自動車損害賠償保障事業損害査定基準によると五四才の就労可能年数が九年七ヶ月になっていることも勘案すると、訴外亀一は本件事故に会わなければ以後九年間は就労可能で、その間少くとも原告主張どおり月額金二六、〇〇〇円、二回の期末手当を加えて年額金三六四、〇〇〇円の収入を得られたものと推認できる。そして右収入を得るために必要な生活費は、原告主張どおり年額金一二四、四二八円が相当であると考えられるので、前記収入額から右生活費及び原告主張の社会保険料金六、六七七円、町県民税金二、九〇七円を控除すると、訴外亀一の純利益は年額金二二九、九八八円となる。同人は右利益を以後九年間にわたって取得しうべきものを、本件事故によりこれを失ったので、同人の逸失利益の事故時の現価額をホフマン式計算法(年別、複式)により求めると、金一、六七三、九二一円(円未満切捨て)になる。そして同人の前記過失を斟酌すると同人が被告らに請求しうべきものは金一、三三九、一三六円になる。

2  ≪証拠省略≫によれば、原告憲雄は訴外亀一の長男、原告和子は長女、原告アヤコは妻、原告宏平は養子であって、他に相続人がいないことが認められるので、原告らは相続人として訴外亀一の右損害賠償請求権を承継取得しうべきものであり、これを計算すると、原告アヤコは金四四六、三七八円、その余の原告は各金二九七、五八六円になる。

(二)  原告憲雄の損害

1  訴外亀一死亡による慰謝料 金五〇〇、〇〇〇円

前記訴外亀一の過失その他諸般の事情を総合すると、金五〇〇、〇〇〇円が相当である。

2  自己の受傷による慰謝料 金二〇〇、〇〇〇円

前記認定の原告憲雄の受傷程度、その後遺症として≪証拠省略≫により認められる同人の顔面に約四センチメートルの線条痕が残っていること、前記同人の過失その他諸般の事情を総合すると、金二〇〇、〇〇〇円が相当である。

3  自己の治療費金五〇、六七二円

≪証拠省略≫によれば、原告主張どおり金六三、三四〇円が認められるが、原告憲雄の過失を斟酌すると金五〇、六七二円が被告に請求しうべきものとなる。

4  原告憲雄が支出した原告和子の治療費金二八、九三二円

≪証拠省略≫によれば、原告主張どおり金三六、一六六円が認められるが、同じく過失相殺すると金二八、九三二円となる。

5  弁護士費用 金七〇、〇〇〇円

≪証拠省略≫によると、原告憲雄は本訴提起のため委任した原告訴訟代理人にその費用として金一五〇、〇〇〇円を支払った事実が認められるが、事案の難易、認容額等の諸事情を総合すると、本件事故と相当因果関係あるものとして被告に請求しうべきものは金七〇、〇〇〇円が相当である。

(三)  原告和子の損害

1  訴外亀一死亡による慰謝料 金五〇〇、〇〇〇円

訴外亀一の過失その他諸般の事情を総合すると、金五〇〇、〇〇〇円が相当である。

2  自己の受傷による慰謝料 金一〇〇、〇〇〇円

前記認定の受傷程度、原告和子の過失その他諸般の事情を総合すると、金一〇〇、〇〇〇円が相当である。

3  弁護士費用 金五〇、〇〇〇円

≪証拠省略≫によると、原告和子は原告訴訟代理人に同じく弁護士費用として金一〇〇、〇〇〇円を支払った事実が認められるが、前記諸事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係あるものは金五〇、〇〇〇円とみるのが相当である。

(四)  原告アヤコの損害

1  訴外亀一死亡による慰謝料 金七〇〇、〇〇〇円

原告アヤコが訴外亀一の妻であること、前記訴外亀一の過失その他諸般の事情を総合すると、金七〇〇、〇〇〇円が相当である。

2  弁護士費用 金六〇、〇〇〇円

≪証拠省略≫によると、原告アヤコは原告訴訟代理人に同じく弁護士費用として金八〇、〇〇〇円を支払った事実が認められるが、前記諸事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係あるものは金六〇、〇〇〇円とみるのが相当である。

(五)  原告宏平の損害

1  訴外亀一死亡による慰謝料 金三〇〇、〇〇〇円

≪証拠省略≫により認められる原告宏平が訴外亀一の養子で同人死亡当時既に妻帯していたこと、前記訴外亀一の過失その他諸般の事情を総合すると、金三〇〇、〇〇〇日が相当である。

2  弁護士費用 金二〇、〇〇〇円

≪証拠省略≫によると、原告宏平は原告訴訟代理人に同じく弁護士費用として金四〇、〇〇〇を支払った事実が認められるが、前記事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係あるものは金二〇、〇〇〇円とみるのが相当ある。

(六)  原告らの自賠責保険金の受領

原告らは、訴外亀一死亡により自賠責保険から金一、四七四、六七八円を受領したことを自認するが、各自の受領額を明らかにしないので相続分に応じて受領したものと推定すべく、これを計算すると各自の受領額は原告アヤコにつき金四九一、五六〇円、その余の原告らにつき各金三二七、七〇六円になる。

(七)  以上により、原告らの被告に対し請求しうべき損害賠償額は、原告憲雄につき前記(一)2と(二)1ないし5の合計額から(六)を控除した金八一九、四八四円、原告和子につき前記(一)2と(四)1ないし3の合計額から(六)を控除した金六一九、八八〇円、原告アヤコにつき前記(一)2と(四)1、2の合計額から(六)を控除した金七一四、八一八円、原告宏平につき前記(一)2と(三)1、2の合計額から(六)を控除した金二八九、八八〇円になる。

五、(結論)

よって原告らの被告に対する本訴請求は、右各金員及び本件事故発生後である本件訴状送達の翌日(記録上明らかなように昭和四三年一二月二二日)から各支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを正当として認容し、その余は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文、仮執行の宣言について同法一九六条一項(仮執行免脱の宣言は相当でないから附さない)をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 森永龍彦 裁判官 寒竹剛 清田賢)

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